アニサキス対策について魚屋が語る
お疲れ様です。
今回は「アニサキス」について書いていきますね。
一般的な知識はウェブ上にたくさんありますので、魚屋の立場でお話したいと思います。
アニサキス中毒になるとどうなる?どんな魚でなりやすい?
アニサキス中毒になると激しい腹痛に襲われます。中毒、と言っても、寄生虫が胃の壁に入り込むことによる物理的な痛みです。なので物理的に取り除くしか治す方法がありません。内視鏡を使った手術で取り除かれるそうです。
アニサキスはありとあらゆる鮮魚に存在しますが、イカ、イワシ、サンマ、サバでの中毒が多いです。
特にイカはアニサキスがたくさ~んいますね。
アニサキス中毒にならないためには?調理済みと、自分で調理する場合
既に調理された鮮魚を食べるときは、よく見ましょう。アニサキスは爪の先ほどの大きさの、白い渦巻状の寄生虫で、肉眼でもはっきり見えます。
また、よく噛みましょう。アニサキスは少しでも傷がつくと死にます。イカにあれほどアニサキスがついているのに、中毒自体が少ないのは、イワシとかサンマに比べてよく噛むからかなぁ?と個人的には思っています。
自分で調理する場合は、速やかに内臓を抜きましょう。アニサキスは魚の鮮度が良いうちは内臓にいることが多いです。鮮度が落ちてくるにしたがって、筋肉(身の方)に入り込んできます。
また、飾り包丁をしっかり入れましょう。イカなどはできれば1mmほどの感覚で、交差に入れると良いと思います。食感も良くなりますしね。余談ですがイカは内側だけでなく、皮目の方に飾り包丁を入れると、びっくりするくらいやわらかい刺身になります。アニサキス対策にもなりますし、ぜひやってみてください。
確実な方法は無いの?
確実なのは加熱するか冷凍するかのどちらかです。加熱の場合は70度、冷凍の場合は24時間が目安です。ただしこれは魚の芯温のことを指しますので、表面をちょっと加熱したとか、冷凍庫に入れてから24時間経った、とかではダメです。ノルウェーでは冷凍時間の目安を48時間にしているくらいです。
酢で締めてもダメですよ。
販売者の責任について
アニサキスは自然界に存在するものなので、販売者が完全に取り除くことは不可能である、ということから、アニサキス中毒に関しては販売者に甘いというのが今までの認識でした。
しかし販売する形態や表示によっては販売者が厳しく罰せられることもあります。
例えば丸のままのイカをお客様が購入して、ご自分で生食された結果中毒になった場合、これは販売者は責任を問われないのでしょうか?
いいえ、責任を問われることがあります!
なんで?そんなのどうしようもないのでは?と思うかもしれませんが、イカに「刺身用」の表示があった場合や、イカの近くにアニサキス中毒の注意喚起を書いていない場合、罰せられることがあります。
もちろん刺身用のサクや、刺身によるアニサキス中毒が発生してしまった場合、これは「そのまま食べられる」という提供になりますので、販売者側の責任は重大です。各地区の保健所の裁量によって、営業停止などの処分が下される可能性があります。
なのでそのリスクから、大手スーパーでは冷凍のイカ、冷凍のサンマしか刺身にしない、というところもありますね。もちろん味は損なわれますが・・・!
結局はリスクとのせめぎあい
どんなに注意しても冷凍していない生の魚にはアニサキスがいる可能性があります。それでも生魚を食べるのは「美味しいから」なのではないでしょうか?
生のイカの刺身、美味しいですよね。生のサバの刺身、う~ん、美味しいですよね。
その美味しさがわかっているから、食べたいという方がいますし、リスクを負って商売するお店があるんですね。